明治神宮で春と秋に行われる奉納舞踊は、2019年にコロナ感染が広まって以来、観客の密集を避けて外拝殿内の屋内でひっそり行われてきましたが、今春、四年ぶりに屋外の神前での奉納が再開。

今回、思いがけず日本舞踊協会からお声をかけていただき、長唄『蓬莱』を務めさせていただきました。奉納舞台は、朱の欄干に囲まれた黒い漆塗りの舞楽殿。敬虔な雰囲気が高まり、お祓いと神前参拝(玉串奉納)をすませたあと、客殿の楽屋から長く敷かれた“うすべり”の上を進んで神前へ。周囲には、行動緩和でどっと日本に押し寄せた外国人観光客であふれ、まるで異国にいるような風景に驚くばかり。

時折の突風にたじろぎながらも奉納舞踊は無事終了しましたが、神宮の森に響き渡る長唄とお囃子。たび重なる天災、人災を乗り越えて広大な境内を埋め尽くす木々。神宮外苑の再開発で樹木の伐採が懸念されるなか、まぶしい新緑が令和の人々を見下ろしていました。

坂東 冨起子

令和5年(2023)5月2日